安楽死を考える~愛犬の死を経験して思ったこと
2016/02/25
どんなに大切にしても必ず自分より先に来るペットの最期。
あなたは安楽死について考えたことがありますか?
そのときは突然やってくる
何ひとつ変わりのない日常。
朝の散歩へ行ってから出勤して夜いつものように帰ってくる。
笑顔で出迎えてくれるあの子に「ただいま~」って言いながら頭をナデナデ。
夕飯作る前にお散歩へ行って、夕食後のひととき。
「今日は歯磨きしようね」
迷惑そうな顔しながらも、じっと我慢してくれる可愛いあの子。
そんなありふれた日常で、いつもと違うことがひとつだけありました。
歯ブラシに血。
年齢は9歳。
歯茎から血が出ても仕方ないのかも知れません。
大きく口を開けさせて歯茎をチェック。
すぐ見える部分には何もありません。
頬をぎゅっと引っ張って奥歯のそのまた奥を覗いてみました。
何かわからないけど黒いものがある。
一瞬で血の気が引きました。
どこかで見たことがある。
私はペットの病気、主に同じコーギーが経験した病気に関するブログは何度となく見てきました。
症状を検索し、もう一度探しました。
“犬 病気 歯茎 癌”
そう、悪性黒色腫(メラノーマ)です。
悪性腫瘍(癌)の一種でメラニン細胞から発生する癌です。口の中にできてしまうことが多い癌で、進行が早いこと、リンパや肺への転移が多いことがこの癌の恐ろしいところです。
翌朝病院へ連れていきました。
診断の結果、予想通りメラノーマでした。
病巣が口の奥だったこともあり
「よく気がつきましたね」
と言われました。
普通に生活していれば見ることはあまりない場所です。たまたま奥まで突っ込んでしまった歯ブラシが病巣に触れただけ。今思えばすごくラッキーだったのかも知れません。
その日すぐにCTを撮り、転移の有無を調べました。
結果を聞きに行くとそこには担当医ではなく院長がいました。
ものすごく嫌な予感。
説明のために院長がわざわざ出てきたということは、きっとものすごく難しいのでしょう。
「病巣本体は目と脳の間です。」
予感は的中しました。
目の奥にできた癌が成長して口の奥から出てきていたのです。
このまま癌が進行すればどうなるか。
最終的には眼球が飛び出してくる。
恐ろしいことを言われました。
眼球は体の中でも激痛を感じる部位であること。
手術でどうにかできる場所ではないこと。
眼球が押し出されてきた時点で安楽死を選ぶ飼い主が多いこと。
眼球が押し出される様子は見ていられないくらい酷いこと。
安楽死を意識させられた瞬間
このとき初めて“安楽死”というものを意識させられたように思います。
自分が癌で苦しんでたら安楽死させてね、なんて言いながら
結局は他人事でしかなかった。
自分があの子の時間を止めるの?
正直簡単に整理のつく問題ではありません。
でもその猶予もそう長いわけでもありません。
メラノーマ~抗がん剤と放射線治療
メラノーマと戦う方法として抗がん剤と放射線治療があります。
放射線治療は体へのダメージが大きく、うちの子のような年齢の子には使用できません。
このときたまたまメラノーマに効果のあった子もいたという新薬(抗がん剤)がありました。まだまだ効果は未知数ではありましたが試してみることにしました。
その日から2週間に1度のペースで抗がん剤を投与しました。
分離不安のあったあの子は、私と離れるのをすごく嫌がります。虐待してると思われるんじゃないかと心配になるほどの悲痛な声で泣きます。
普段出勤するときもそうです。
そんな子ですからこちらが根負けして会社の事務所に連れて行くこともよくありました。うちは自営業なのでね。
だからあの子がたったひとりで私と離れるのは初めてでした。
朝一番に預けて夜迎えに行く。
これを何度も繰り返しました。
そのたびに悲痛な声で泣き、私も車を運転しながらよく泣きました。
メラノーマ~抗がん剤の効果
病気が発覚してすぐ、1箇所膨らんでしまった頬は少し大きくなったり小さくなったりを繰り返しました。
多少なり抗がん剤の効果があったのかも知れません。
たまたま少し大きくなってしまった時、病巣の一部が奥歯に触れてしまいました。
この癌は刺激で大きくなってしまう癌です。
メラノーマ病巣からの出血
刺激により大きくなってしまった病巣からは血が少しずつ出ていました。
床に寝転んで寝ていると、頬のあたりに血の混じった唾液が小さな水溜まりを作りました。
ワンと鳴くたび、ごはんを食べるたび、病巣は傷つき出血が起こりました。
そのたび病院へ行き止血のための注射や血液を増やすための点滴の繰り返し。
この頃は毎日のように病院へ通っていました。
それからまもなくのことです。
重度の貧血状態に陥りました。
輸血とその効果
今のこの状態を回復させるには輸血するしか方法はありません。
輸血をしても出血が止められない限り何日もつかわからないこと。
輸血をするためには血が必要なこと。
たくさんお話を先生としました。
幸い我が家には血をもらうことができる若いコーギーが3頭います。
その子たちから血を分けてもらうこと、1回やってダメだったら諦めること。
先生はしぶしぶでしたが納得してやってもらえることになりました。
ここの病院は飼い主に金銭的負担をできるだけかけない方法を模索してくれる病院でしたから、効果の見込めないものはなかなかうんとは言ってくれません。
正直言って単なる私のワガママです。
失う覚悟が出来ていなかったからに過ぎません。
そのことでイタズラにあの子の命をひっぱり、苦しむ期間を長引かせる結果になる可能性だって大いにありました。
輸血を終えて家に帰ったあの子は、まるで病気がなかったことのようにイキイキとしていました。
立つことすらできなかったあの子が!
本当に夢を見ているようでした。
いつものお肉屋さんで一番高いステーキを買い、イチゴのショートケーキもケーキ屋さんで買いました。
ハーゲンダッツのアイスクリームも買いました。
あの子は夢中で食べましたよ?
もう健康に良くないから、太るからダメとか言われないでお腹いっぱい食べました。
それでもやはり血は少しずつ体から抜け落ちていきます。
輸血してから3日目。
また立つこともままならなくなりました。
病院へ行き、点滴をしてもらいました。
流れ落ちる血は、まるで大量の水に絵の具をちょこんと垂らしたような薄い薄い液体でしかありませんでした。
口元にアイスクリームを持っていくと、ゆっくりゆっくり舐めてくれましたが、呼吸は荒く辛そうでした。
午前4時頃のことです。
翌朝一番に病院の予約をもともと入れていました。
あと数時間。
このときに安楽死させてもらうことを決めました。
苦しい。つらい。
そこから解放してやるのが私の最後の仕事だと思いました。
最期のとき
朝8時ごろ。
あの子はぐっと伸びをすると、静かに息を引き取りました。
もうそろそろ病院へ行こうかというときでした。
あの子はわかっていたのでしょうか?
私に辛い決断をさせたくなかったのでしょうか。
安楽死を考える
最後においしいものいっぱい食べられたからよかったんじゃないか?
そう思う反面
苦しい期間を2倍にしてしまった
そう考える自分もいます。
あの子の名前は“めろん”と言います。
とても頭がよく美しいコーギーでした。
これを読んだ方は自分の可愛いあの子を重ねて読んでくださったと思います。
頭の中で想像した自分は
安楽死を覚悟しましたか?
安楽死という問題はとてもデリケートです。
ずっと昔から賛否両論あり議論されてきた問題です。
しかし私のようにいきなりその答えを迫られる状況になる人もたくさんいるでしょう。
病気のなかでもめろんのように顔が徐々に変形していく様は、飼い主にとっても耐えられないくらいのダメージを与えます。
闘病生活は約4ヶ月です。
かなり省略して書きましたのでもっと短く感じたかも知れません。
癌の本体があった右側の顔は亡くなる頃にはやはり少し変形してしまっていました。
これを読んでくれた友人が、家族で話し合いをしておこうと思うと言っていました。
事前に話し合いの場を持つことはなかなかありませんよね。でも話し合いを事前に持つことであわてなくてすむ部分も出てくる可能性だってあります。
そのきっかけになれたことを光栄に思います。
あなたの答えは出そうですか?