ペットと暮らす百物語(1)
ペットと暮らす人はこの世界に数えきれないほどいて、そしてそこには星の数ほどたくさんのストーリーがある。
ほっこりする話、せつない話、ヒヤっとした話、怖い話、笑える話。
普段の生活の中で遭遇する、ささやかなエピソードを集めてみました。めざせ100話!
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深夜の散歩
その日は出かける用事があり、夜のお散歩が深夜の1時ごろになってしまいました。梅雨明けの蒸し暑い夜でした。
我が家は閑静な住宅街の一角にあり、すぐ近くには小学校、中学校、池、市民グランドやゴルフの打ちっぱなしと、夜遅くになるとなんとも言えないシンとした雰囲気を醸し出す地域です。
もちろんお散歩も、この妙に薄暗い区域を通らねばどこにも行けません。
その中でも小学校の各階の廊下の突き当たりにある緑の非常灯が映し出すぼんやりとした校舎は、視線を向けるのが嫌になるほど薄気味悪く、あまり気持ちのよいものではありません。
どこの学校にも語り継がれる怪談というものがありますよね。私の出身校であるこの小学校にも色んな怪談話がありました。
見たくないと思えば思うほど視線は釘付けになり、神経は研ぎ澄まされ、些細な音にも敏感になる。思い出したくない話が勝手に脳内再生されてしまう。
「怖くない。怖くない。大丈夫。怖いのは生きてる人間だけさ~♪」
なんて、ひとりごとを呟きながら愛犬のお尻に視線を集中させました。
学校のビオトープや裏庭あたりからは、耳が痛くなりそうなほどのカエルたちの合唱が響いてきます。
小学校の校門の横にあるビオトープの前にさしかかったときでした。
つんざくようなカエルの声が一斉に止まりました。一気にシーンとした静寂が訪れ、犬たちも耳をピンとたててまわりの様子をうかがっているようでした。
こういうシチュエーションで犬たちが一点集中の素振りを見せると、余計に不安が押し寄せてくるような嫌な気分になります。
とりあえず出すものは出した。すまぬが今日は早々に帰ろうぞ!
犬たちのリードをくいっと引っ張り、自宅の方向へと歩き出したその時でした。
一番年長の愛犬が突然、盛大に足を引き摺りだしました。地面に後ろの右足がつけられず、まともに歩けない様子。
「なんで!?さっきまで普通に歩いてたのに!」
私はあわてて犬を抱き寄せ、引き摺っていたほうの足を確認しました。
ほの暗い街灯の下、よく見えない目を必死に細めて足の裏を確認すると、肉球の横あたりからはみ出たような白っぽい塊。
なんだこれは?
まるで切れた肉球から中身が出てきたかのようなヌルリとした感触。でも血は出ていません。
その時でした。
その白っぽい塊はポロリと地面へ落ちていきました。
私は震える指先を愛犬のお尻に擦り付け、一目散に家へと走って帰りました。
そうです。あの白っぽい塊は肉球の間に挟まってしまった、巨大なナメクジだったのです。
おしまい。笑
高層マンションの恐怖
我が家は高層マンションの25階に住んでいます。バルコニーは、やや高めで手すりがあるだけのシンプルな作りです。
高層マンションのバルコニー、体験した経験のある方ならわかると思いますが、吹き上げる風は強く高所が苦手なひとは手摺に近付くだけでヒヤっとするような怖さがある場所です。
やはり高層ということもあって危険なのでバルコニーに猫は出さないように気をつけていました。
ところがある日、子供がバルコニーに通じる窓を開けっ放しにしてしまったために、猫が外へ出てしまったのです。
気がついた時には手すりに愛猫が登って風に煽られながらヨロヨロと歩いていたのです。
心臓が口から飛び出しそうになりました。
寿命が縮むとはまさにこのこと!
しかし猫を驚かせてはいけないので叫びそうになる口を必死で抑え、冷静を装って好物の焼きカツオスナックを手におびき寄せました。
バルコニーの手すりで足を滑らせたら25階下に真っ逆さまという状況。本当に生きた心地がしませんでした。
おやつを見て、すぐに手すりから降りてきてくれて一件落着でしたが、今思い出しても心臓がばくばくしてしまうほどの出来事でした。
あれ以来、より一層バルコニーへ出さないように家族で協力しあって窓の開け閉めには気をつけるようになりました。
高層マンションにお住まいの方は、ペットと子供の行動にはくれぐれもご注意くださいませ。
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