愛犬のSOSに気付くことができるか!?~血管肉腫と我が家のコーギー
2016/02/25
たとえば愛犬がいつもとなんとなく違ったとき。
ただ何も問題ない普段の生活の中で。
あなたはどこを見て、何を記憶に残していますか?
今日は昨年末に亡くなった “あずき” の話をしたいと思います。
良性脂肪種の切除手術
あずきは昨年脂肪種の切除手術を受けました。
病院へ “しこり” ができていることを相談しに行き、その場で病理検査をしてもらい良性であることがわかりました。
いわゆるイボみたいなものです。
できやすい子もいて何度もできる子もいます。
良性であれば吸収されてなくなることもあるそうで邪魔でなければそのまま様子見でもよかったのですが、あずきの場合しこりができたのがワキのあたりだったため切除してもらうことにしました。
特に問題のないありふれた手術でしたし、健康にも何も問題はなく術後の経過も順調でした。
しかしその後3ヶ月もたたずに、あずきは血管肉腫という癌で亡くなったのです。
血管肉腫とは血管の癌です。血管の細胞が癌化してしまうという恐ろしい病気です。
8~10歳前後に発症するケースが多く、血管の多い肝臓や脾臓に多く見られ転移や進行スピードの速い癌です。
症状が少ないために早期では発見するのが難しい癌で、発見された時点で余命わずかな場合が非常に多い癌でもあります。そして切除できたとしても余命延長をあまり期待できない癌でもあります。
血管肉腫~最初の異変を感じたとき
玄関を出てしばらくたつまでは「我先に!」と言わんばかりの力で先を争うオスたちと、そのまわりをはしゃぎながら歩くあずき。
それがよくある光景です。
あずきは一人で散歩に行くことが多いので、ほかの子がいるとうれしいんでしょうね。
(我が家はそれぞれのお散歩担当者が違うためペアで散歩に行く子とひとりで散歩の子がいるのです。)
いつもならはしゃいで歩くあずきが、なんだか今日は普通です。
しんどそうだとか、そういうことはないのですが。
「なんだか大人しいね。」
そういう会話をしたことを覚えています。
妙な違和感がありました。
でも、ただそれだけです。
ごはんを食べないとか、ほかに調子の悪そうなところは一切ない。
体のチェックをしてもどこも何もない。
あずきも1月になれば11歳。
もう老犬の中に入ります。
大人しく見えたのはたまたまかもしれない。
何かあるという確証はありませんし、気にしすぎなのかも知れない。
年を取るとはこういうことなのかも知れない。
そう思いました。
あずきが亡くなる約1ヶ月前、12月のはじめの出来事でした。
血管肉腫~最初の貧血症状
妙な違和感があったものの、それからはごく普通に過ごしていたあずき。
しかし、異変はいつもの散歩道である長いのぼり坂の途中で起こりました。
なんだか覇気がない動きに心配になり口の中を見ると、歯茎がいつもより若干色が薄い。
即座に抱っこして家まで帰りました。
でも、家に帰ったあとは普通だったのです。
散歩のあとの夜ごはんもモリモリ完食し、貧血症状はもうありません。
外傷もありませんし、下痢や嘔吐などもありません。
少し様子を見てまたおかしいようだったら病院行こうか。
なぜそう思ったか?
手術したことのある方ならご存知かと思いますが
手術前には麻酔に耐えられる体かどうか、一通り検査が行われます。
血液検査ももちろんやります。
そのときに何の異常もなく健康そのものだったからです。
まだ2ヶ月半もたってないような時期のことですし、
手術のあとも経過観察のため病院には何度か通っていたからです。
しかもあずきはもうすぐ11歳です。
人間だって年をとれば坂道だってキツくなって当然。
犬だってやっぱりしんどくなったりするんじゃないの?
そういう疑問もありました。
しかし貧血症状のあった2日後、散歩に出る瞬間の勢いがあきらかになかったのです。
血管肉腫~病院へ
どういう症状か。
そう言われたら何て答えたらいいのか曖昧な状態でした。
「2日前に若干貧血を起こしてたような様子がありました。」
ごはんは変わらず食べます。
下痢や嘔吐、発熱はありません。
散歩に行くときの勢いがいつもよりありませんでした。
それ以外言えることが何もない。
「とくにおかしなところはなさそうに見えますが」
そう言われました。
当然ですね。
飼い主自身もよくわからずに連れて来ているのですから。
「エコーをしてください」
そう先生にお願いしました。
血液検査でもよかったのかも知れませんが、
ちょっと前にしたのですから先生もそのデータは見ているはずです。
病院に行く前から今日はエコーをしてもらう。
そう決めていました。
何もなければそれでいい。
自分の中のモヤモヤがなくなるのであればそれでいい。
そんなつもりでした。
血管肉腫~発見
エコーをおなかに当て、順番に臓器をチェックしていきました。
胃の中に異物もありません。
腸もしっかり動いています。
しかし、肝臓を映した瞬間
先生の手が止まりました。
肝臓に張り付くように小さな点が全体に散らばっています。
肝臓のまわりに無数にある血管が癌に侵されていたのです。
「血管肉腫だと思います。少し出血しているようです。」
「広範囲に広がっているため切除は難しいです。」
そう言われました。
安心材料にするつもりのエコーが大変なものを発見してくれたのです。
これが一塊になっていたのであれば切除は可能でした。
しかしあずきの肝臓の癌はまるでイチゴの種のように広がっていたのです。
ひとつひとつは小さな癌です。
しかし切除することはもはやできません。
この癌は血管の癌であるがゆえに簡単に全身へと広がっていく癌です。
ですからすぐに他の臓器への転移の有無を調べましたが、幸い他の臓器への転移は見つかりませんでした。
不幸中の幸いというものです。
しかし早くて余命1ヶ月。
その診断は変わることはありませんでした。
血管肉腫~急変
余命宣告されてから数日後、あずきの状態が急変しました。
それまでは大きな変化もなく普段と何も変わらないような、まるで癌だなんて夢なんじゃないかと思うくらいに元気でした。
皮下点滴を何度かしたせいか、体が少し大きくなったように見える。
それだけでした。
広場で大好きな長男と遊んだ、その翌日のことでした。
ぐったりと横たわり、頭を少し持ち上げるのが精一杯のあずき。
めろんの最期の姿が走馬灯のように頭の中を駆け巡りました。
止血剤がまるで効いていない。
そう思いました。
すぐに病院へ走り、点滴と注射。
処置が終わったあとのあずきは幾分か元気を取り戻したように見えました。
その日の夜。
あずきの大好きなお肉をブロックで買い、あずきの好物のひとつであるイチゴも買いました。
食べられる間にたくさん食べさせてあげなければ。
しかし、食べて胃を圧迫することであずきは苦しいようでした。
先生からも少しずつ何度も食べさせるように指示されていましたから、焼いたお肉を少しずつ少しずつ何度も食べさせました。
点滴や注射のおかげで楽になったのか、あずきはもっともっとと欲しがります。
しかしたくさんあげてしまうとまた辛くなる。
「また明日食べようね」
そう言って一緒に眠りました。
昨夜あんなに食欲があったあずきが、明け方にはもうぐったりしています。
もしかしたら昨日の時点でもうどこかが破裂してしまっていたのかも知れません。
この癌になった子は破裂してしまったがために亡くなる子も非常に多い。
癌に侵された細胞というのはむごく脆いものです。
血管ですから簡単に破裂し出血するのです。
朝7時半。
家族の顔をゆっくりと見回し、ぐっと体に力を入れたあと
ゆっくりと体の力が抜けていきました。
長男の目をしっかりと見ていたので、長男がそばにいることを確認したかったのかも知れません。
最期に挨拶がしたかったのかも知れません。
結局あずきは宣告された余命を生きることもなく
たった数日で亡くなってしまいました。
長男は “あずきが死んだのは自分が広場で一緒に遊んだせいだ” と大声を上げて泣きました。
でも、それでも、それが原因で死期を早めたとしても、あずきは遊びたかったでしょう。
大好きな長男と遊んでいたあのときのあずきは本当に楽しそうだったのだから。
最後に
” なにか変だ ”
そう思うことってありますよね。
それは獣医にはわからない飼い主だけの特殊な能力です。
普段ずっと一緒にいるものにしかわからない小さな小さな違いです。
とくに高齢になってくると、ちょっとした変化が大きな病気のサインだったりするのです。
毎年ペットドック?
もちろんそれもいいでしょう。
だけど調べられるのはそのときの体調だけ。
1ヶ月後にはもう変わってるかもしれない。
それだけは忘れないでください。
もちろん私も肝に命じます。
あなたの観察眼にまさる病気の早期発見方法はありません。
たとえばこんな話がありました。
” いつもより換毛量がすごく多かったから気になって病院で検査したら脳の病気が見つかった ”
そんな友人がいました。
換毛量なんて、それこそ飼い主以外にわかる人なんていません。
こんな体の変化に違和感を覚えるのは飼い主以外いないのです。
もちろんこれを読んでくださっているあなたにも
同じ能力が備わっています。
だからぜひ自分の勘を信じてあげて欲しい。
こちらから先生に積極的に血液調べて欲しい、エコーして欲しいってリクエストしたっていいんです。
何もなければそれでいいじゃない。
愛犬のこと、一番わかってるのは先生じゃなくあなたなのだから。